あなたは、日本の「銭湯(せんとう)」を知っていますか?「銭」はお金、「湯」はお風呂のことを表します。銭湯とは、お金を払って入る、大きなお風呂のことです。

日本では、大きなお風呂に入るとき、他の人と一緒にお湯に漬かることが一般的です。日本のような入浴文化をもたない国の人から見ると、「他の人と一緒にお風呂に入るなんて、恥ずかしくないの?」と不思議に思うことでしょう。

実を言うと日本人も、他人とお風呂に入ることが恥ずかしくないわけではありません。でも、それ以上に大きなお風呂の気持ちよさを知っているからこそ、自宅にお風呂があるにもかかわらず、わざわざ大きなお風呂に入りに行くのです。

温泉も大きなお風呂の一つですが、銭湯は、温泉よりももっと気軽に楽しめる場所です。今回は日本の銭湯の特徴や、おすすめの楽しみ方をご紹介します。この記事を読んで、ぜひ日本の銭湯に行ってみてください!

1. 日本の「銭湯」ってどんな場所?

日本の銭湯は、大きく分けて「銭湯」と「スーパー銭湯」の2種類があります。

それぞれどう違うのか、見ていきましょう!

「銭湯」の特徴

伝統的な銭湯のスタイルを楽しめるのが「銭湯」です。銭湯には、受付、脱衣所、体を洗う場所、大きなお風呂があります。そこまで広くはなく、一度に入れるのは数十人ほどです。

大きなお風呂の数は銭湯によってさまざまで、薬湯(くすりゆ)[1]、ジェットバスなど、数種類のお風呂が楽しめるところもあります。

一般的な銭湯のイメージ

また、銭湯は料金が安いことも特徴です。料金は都道府県ごとに一律で、2023年4月現在、最も安いのは宮崎県の350円、最も高いのは東京・神奈川などの500円(12歳以上の大人料金)です。

「スーパー銭湯」の特徴

スーパー銭湯は、一言でいうと「銭湯の豪華バージョン」です!大きなお風呂の種類は銭湯よりさらに多く、露天風呂や岩盤浴、サウナがあったりもします。

スーパー銭湯は銭湯より広く、100人以上入れるところも珍しくありません。レストランや休憩スペースがあって長時間過ごせるところも多く、家族連れやカップルにも人気です。

岩盤浴やサウナなど、お風呂以外の設備も充実している

スーパー銭湯の入場料は、500円~1000円ほどです。岩盤浴などを利用する場合、さらに追加料金がかかることがあります。また、地域やサービス内容によっても、料金に幅があります。

銭湯に比べると料金は高いですが、ゆっくり疲れを癒やしたいときや、友達・恋人とお出かけしたいときにぴったりです。

2. 日本の銭湯の歴史

そもそも日本における入浴文化は、6世紀ごろ、仏教上の沐浴(もくよく)、すなわち身を清める、宗教的な行為として広まりました。寺院にお風呂場を作り、修行中の僧侶が貧しい人々や病人・囚人を入浴させた「施浴(せよく)」が、のちの銭湯につながっていったのです。

現在のような銭湯が庶民の間に普及したのは、江戸時代になってからです。当時の一般家庭にはお風呂がなかったため、庶民にとって、銭湯は日常生活に欠かせない場所でした。

しかし1970年以降になると、一般家庭にもお風呂が普及し、銭湯の数は少なくなっていきました。1968年には全国に約1万8000軒の銭湯があったといわれていますが、2022年には約1800軒と、10分の1に減少しています。

今や銭湯は、昔の日本の面影を残す、貴重な場所の一つだといえるでしょう。

3. 「銭湯」と「温泉」の違い

銭湯と温泉の大きな違いは、使われている水です。

銭湯ではほとんどの場合、水道水などを沸かしたお湯を使用しています。一方温泉は、地中から湧き出した天然のお湯を使っています。温泉の基準は法律で決められており、温度や成分などの条件を満たさなければ、温泉とは認められません。

また、銭湯の中には、温泉のお湯を運んできて使っているところや、温泉の成分を再現した「人工温泉」を売りにしているところもあります。近くに「温泉」を売りにしている銭湯がないか、ぜひ調べてみましょう!

温泉を体験したければ、こちらの記事もおすすめです。

4. 銭湯の基本マナーを知ろう

ここでは、銭湯に行くときの持ち物とマナーをご紹介します。

持ち物

銭湯の基本的な持ち物は、以下の通りです。

・現金

・シャンプー・コンディショナー・せっけんなど

・体を洗うスポンジやタオル

・メイク落とし・スキンケア用品(必要な人)

・体を拭くタオル

・着替え

・ヘアゴム、シャワーキャップ(髪の長い人)

この持ち物は、一般的な銭湯とスーパー銭湯、どちらにも当てはまります。ただし、中にはシャンプーなどが無料で使える、またはタオルやせっけんなどを購入できる銭湯もあります。

必要なものは銭湯で購入し、備え付けのシャンプーなどを使えば、持ち物は現金だけで済むこともあります。ただ、行ってみたら何もなかった…なんていうこともあるかもしれません。ホームページなどで、事前にどんなものがあるのか確認しておくと安心でしょう。

銭湯でのマナー

銭湯は、多くの人々が利用する場所です。快適に過ごすため、以下のようなマナーに注意しましょう。

体調の悪い場合・お酒を飲んだ後には銭湯に行かない

体調が優れないときやお酒を飲んだ後は、銭湯に行かないようにしましょう。体調が悪化したり、急に倒れたりする危険性があります。

掛け湯をしてから湯船に漬かる

湯船に入る前に体にお湯を掛けることで、汚れを落とすだけでなく、体をお湯に慣らすことができます。

湯船に髪やタオルを漬けない

他人のタオルや髪が湯船に漬かることを、不快に感じる人もいます。長い髪の毛は結び、タオルは肩や頭に乗せて、髪やタオルがお湯に漬からないようにしましょう。

静かに楽しむ

銭湯には、リラックス目的で行く人も多くいます。大声で話したり騒いだりせず、静かに楽しみましょう。

5. 銭湯に行ってみよう!

それでは、実際に銭湯に行ってみましょう!「銭湯」と「スーパー銭湯」、それぞれの楽しみ方をご紹介します。

「昔ながらの銭湯」で、レトロな日本文化に触れる

「日本の銭湯」の定番といえば、やはりシンプルな昔ながらの銭湯です。まずは、家から近い銭湯を探してみましょう!

歴史の長い銭湯には、レトロな雰囲気の建物、浴室の壁面に描かれたペンキ絵、タイル張りの浴槽などがよく見られます。これらを眺めながらお湯に漬かれば、まるで昔の日本にタイムスリップしたかのような、不思議な感覚が味わえるでしょう。

また、お風呂上がりには瓶に入ったコーヒー牛乳フルーツ牛乳を飲むのが、日本流の楽しみ方です。SNSにアップしたら、きっと友達に自慢できますよ!

銭湯の定番・コーヒー牛乳(左)とフルーツ牛乳(右)

「スーパー銭湯」で、じっくり疲れを癒やす

最近疲れているから、一日のんびりして疲れを癒やしたい。いろいろな種類のお風呂に入りたいし、サウナや岩盤浴にも挑戦してみたい……。そんなときには、スーパー銭湯がぴったりです。

スーパー銭湯では、多くの場合、受付で利用方法を説明してくれます。そのため、銭湯の仕組みに慣れていない外国人でも、銭湯デビューしやすいといえるでしょう。

また、一般的な銭湯に比べると、スーパー銭湯は備品が充実しています。岩盤浴に入る場合は、館内着やバスタオルを借りることもできます。少ない荷物で、身軽に楽しみましょう!

お風呂やサウナ、岩盤浴を楽しんだ後は、マッサージチェアで体のコリをほぐしたり、休憩スペースで漫画を読んだり、レストランで食事をしたりして、体を休めながらゆっくり過ごしましょう。一日過ごせば、身も心もリラックスできますよ!

そばや海鮮丼など、日本食が楽しめるスーパー銭湯も多い

<コラム>現代的でおしゃれ!最近話題の「デザイナーズ銭湯」とは

最近注目されているのが、昔ながらの銭湯を改築した「デザイナーズ銭湯」です。

デザイナーズ銭湯は、内装はおしゃれで新しいですが、一般的な「銭湯」に分類されるため低価格で楽しむことができます。また、昔ながらの銭湯の良さである「レトロ感」を生かした内装が多く、若者を中心に人気を集めています。

SNSでも人気の高いスポットなので、近くにあれば、ぜひ一度行ってみましょう!

6. まとめ

日本の銭湯は、温泉よりも気軽に楽しめる、大きなお風呂です。銭湯には一般的な「銭湯」と「スーパー銭湯」があります。

レトロな日本文化に触れたい方は、一般的な「銭湯」に行ってみましょう!昔ながらの雰囲気を楽しめるところが多く、料金もリーズナブルです。古い銭湯をおしゃれに改築した「デザイナーズ銭湯」などもあり、若者に人気です。

お風呂だけでなく、サウナ、岩盤浴などいろいろな設備を楽しみたい!という方には、サービスが充実している「スーパー銭湯」がおすすめです。

あなたもぜひ、日本の銭湯に行って「大きいお風呂」で体を癒やしてみてください!

Q. 温泉と銭湯の違いは何ですか?

A. 銭湯と温泉の大きな違いは、使われている水です。銭湯ではほとんどの場合、水道水などを沸かしたお湯を使用しています。一方温泉は、地中から湧き出した天然のお湯を使っています。温泉の基準は法律で決められており、温度や成分などの条件を満たさなければ、温泉とは認められません。

Q.銭湯とスーパー銭湯の違いは何ですか?

銭湯は、そこまで広くはなく、一度に入れるのは数十人ほどです。料金が安く、2023年4月現在、最も安いのは350円、最も高いのは500円です。スーパー銭湯は露天風呂や岩盤浴、サウナがあり、100人以上入れるところも珍しくありません。入場料は500円~1000円ほどですが、岩盤浴などを利用する場合、追加料金がかかることがあります。

Q.銭湯の特徴は?

銭湯には、受付、脱衣所、体を洗う場所、大きなお風呂があります。 そこまで広くはなく、一度に入れるのは数十人ほどです。薬湯(くすりゆ)、ジェットバスなど、数種類のお風呂が楽しめるところもあります。料金は都道府県ごとに一律で、2023年4月現在、最も高いのは東京・神奈川などの500円(12歳以上の大人料金)です。

参考)

e-Gov「温泉法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000125(閲覧日:2023年5月16日)

江戸川区浴場組合「銭湯、温泉、スーパー銭湯の違いとは?それぞれの決まりや特徴を解説!」,『湯らり江戸川』,2020年2月3日,https://www.oyunofuji1010.com/news/2522/(閲覧日:2023年2月25日)

東京都浴場組合「東京銭湯」,https://www.1010.or.jp/(閲覧日:2023年4月7日)

全国浴場組合「各都道府県の入浴料金表」,https://www.1010.or.jp/zenyoku/fee.html(閲覧日:2023年3月30日)

Takayoshi Yamabe,国家の成立にも深くかかわった日本の風呂,Highlighting Japan, March,2019,https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/201903/201903_02_jp.html(閲覧日:2023年2月25日)

町田忍「銭湯ことはじめ—庶民の入浴文化」,『nippon.com』,2017年4月25日,https://www.nippon.com/ja/views/b07302/(閲覧日:2023年2月25日)

株式会社東京商工リサーチ「街の銭湯、ピークから1万6000軒減少」,2022年4月23日,https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1191268_1527.html(閲覧日:2023年3月30日)

BIGLOBE旅行「スーパー銭湯って何?」,『温泉専門用語』,https://travel.biglobe.ne.jp/onsen/jiten/senmon_07.html(閲覧日:2023年2月25日)

東京電力エナジーパートナー株式会社「【銭湯の持ち物リスト完全版】必要な物・マナーを初心者向けに解説!」,『くらひろmedia by TEPCO』,2022年10月19日,https://kurahiro.tepco.co.jp/media/livingalone/14953/index.html(閲覧日:2023年2月25日)

株式会社リクルート「東京都内のおすすめ銭湯8選。オシャレ銭湯やド迫力天井絵も<2022最新>」,『行ってみたい!が見つかるじゃらんニュース』,2022年9月30日,https://www.jalan.net/news/article/235195/(閲覧日:2023年2月25日)

株式会社リクルート「【関東】2022年注目のスーパー銭湯25選!最新ニューオープンから充実設備の温泉も<2022>」,『行ってみたい!が見つかるじゃらんニュース』,2022年11月30日,https://www.jalan.net/news/article/491620/(閲覧日:2023年2月25日)

株式会社mov「訪日外国人観光客に銭湯が人気の理由 | 民泊との連携がカギ」,『訪日ラボ』,2021年1月12日,https://honichi.com/news/2019/12/11/sentoxminpaku/(閲覧日:2023年4月5日)

株式会社パルコ「「そうだ、銭湯行こう♨」都内で行きたいデザイナーズ銭湯5選」,『PARCO Journal』,2022年4月1日,https://journal.parco.jp/news/?id=927(閲覧日:2023年4月5日)

株式会社中日新聞社「浴場建築に新風 デザイナーズ銭湯、個性で勝負 生みの親・今井健太郎さん」,『東京新聞 TOKYO Web』,2021年6月2日,https://www.tokyo-np.co.jp/article/108034(閲覧日:2023年2月25日)


[1] 薬品や薬草を入れた入浴用の湯