世界でも有数の活火山大国である日本には、2万7,970の源泉と2,934カ所の温泉地があります。温泉地の一部はやがて温泉街として発達し、その美しい景観や風情は、温泉の効能と相まって日本の温泉人気を後押ししています。

本稿では、ただ湯に浸かるだけではない、日本の文化・伝統がぎゅっと詰まった全国各地の温泉街をご紹介します。ぜひ、参考にしてくださいね。

1. 日本に来たら一度は訪れたい、絶景の温泉街9選

温泉街は、源泉を中心に温泉施設や宿泊施設、商店などが集まってできた場所です。日本では観光名所として全国各地に点在しています。

【群馬】草津温泉(くさつおんせん)

毎分3万2,300ℓ以上の自然湧出量を誇る草津温泉。温泉街の中心には、湯の温度調整をする「湯畑(ゆばたけ)」と呼ばれる施設があり、日没後にはライトアップされた幻想的な風景が広がります。

大自然に360°ぐるりと囲われた西の河原露天風呂(さいのかわらろてんぶろ)では、ゆったりと湯に浸かりながら、新緑や紅葉、雪など四季折々の自然を楽しめます

【神奈川】箱根温泉(はこねおんせん)

東京から約1時間半と、観光客には嬉しい立地の箱根温泉。温泉街の中心を流れる大きな川の両側には日本情緒あふれる建物や古民家風のカフェが立ち並びます。

また、「箱根湯本・塔ノ沢(はこねゆもと・とうのさわ)」、「宮ノ下・小涌谷(みやのした・こわくだに)」、「強羅(ごうら)」、「仙石原(せんごくはら)」、「芦ノ湖(あしのこ)」の5つのエリアからなる箱根温泉では、雄大な自然や美術館、伝統的な建築物など、温泉以外のレジャーも目白押し

例えば、箱根火山のカルデラ湖である芦ノ湖エリアでは、富士山をバックに、遊覧船から四季折々の自然の美しさを楽しむことができます。

また、強羅エリアにある「大涌谷(おおわくだに:写真上)」では、ロープウェイに乗って、沸き立つ温泉や吹き上げる白煙など、火山のダイナミックな活動の様子を観察しに行くことができます。

【山形】銀山温泉(ぎんざんおんせん)

川の両岸にレトロな木造の温泉旅館が立ち並ぶ銀山温泉。日本の豪雪地帯に位置しており、雪化粧をした街並みや露天風呂から眺める雪景色はまさに絶景です。夕暮れにはガス灯に火がともり、優しく温かな日本情緒が漂います。

【岐阜】下呂温泉(げろおんせん)

「日本三名泉」の一つである下呂温泉は、美容液のような無色透明の柔らかな湯が特徴です。古い角質やくすみを除去し、つるつるスベスベの美肌をかなえてくれます。

飛騨川(ひだがわ)のせせらぎをバックに源泉が堪能できる「噴泉池」や、伝統的な美しい日本建築が集まった「下呂温泉合掌村(げろおんせんがっしょうむら:写真上)」も、見どころの一つ。

【兵庫】有馬温泉(ありまおんせん)

日本最古の温泉として知られる有馬温泉は、7つ[1]もの温泉成分が含まれた世界的にも珍しい多くの成分が混合した温泉です。特に、「金泉(きんせん)」と呼ばれる温泉は、海水のおよそ2倍の塩分と鉄分をたっぷり含んだ温泉で、湯は赤褐色に美しく輝きます。

また、温泉街へ一歩足を踏み出せば、和と洋が織り交ざった19世紀前後の日本を彷彿とさせる、美しいレトロな街並みが体感できます。

【鳥取】皆生温泉(かいけおんせん)

皆生温泉は、「日本の渚100選」や「日本の夕陽・朝日100選」に選ばれるなど、景勝地としても有名な海辺の温泉地です。すぐ側のビーチで海水浴を楽しんだ後は、湯船から白砂青松[2]の海岸線を眺めてはいかがでしょうか。

【愛媛】道後温泉(どうごおんせん)

道後温泉のシンボルにもなっている「道後温泉本館(どうごおんせんほんかん:写真上)」は、国の重要文化財にも指定されている有名な公衆浴場です。木造3階建ての建物は築120年超え。ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンでも最高位の三つ星を獲得した、日本の温泉文化の象徴的建築物です。

【大分】別府温泉(べっぷおんせん)

総湧出量・源泉数日本一の別府温泉で有名なのが、「地獄」です。「地獄」とは温泉の噴出スポットのことで、その熱さゆえに近寄りがたいことからその名が付けられました。

地獄は全部で7つあり、その内「血の池地獄」、「海地獄」(写真上)、「龍巻地獄」、「白池地獄」の4つは国の名勝にも指定されています。

【熊本】黒川温泉(くろかわおんせん)

黒川温泉は、緑豊かな山々に囲まれた里山の温泉街です。30軒の和風旅館と里山の美しい自然が織りなすしっとりと落ち着いた街並みは、訪れる人の心を癒します。

例年12月から3月にかけては、「湯あかり(ゆあかり)」と呼ばれるライトアップイベントも行われます。約300個もの竹の灯籠(とうろう)[3]が、温泉街の川面を美しく照らします。

黒川温泉観光旅館協同組合のYouTubeチャンネルからは、四季を通じた黒川温泉の様子を見ることができます。こちらもぜひご覧ください。

<コラム これだけは押さえておこう!日本の入浴マナー>

礼儀を重んじる日本では、温泉にもマナーがあります。外国人が覚えておきたい基本的なマナーは、以下の通りです。

・まずは、脱衣所で全ての服を脱ぎましょう
・カメラ・携帯電話の使用や、飲食物の持ち込みはできません
・浴場に入ったら、身体をきれいに洗ってから湯船に浸かりましょう
・湯船に入るときは、長い髪はゴムなどで束ね、タオルは湯船の外に置いておきましょう
・浴場では髪染めや洗濯をしてはいけません
・浴場では大声を出さず、静かに過ごしましょう
・浴場を出る前に、髪や身体を拭きましょう

皆さんは、いくつ知っていましたか?いざ温泉に入る際に戸惑わないよう、ぜひ事前にチェックして、すてきな入浴タイムを過ごしてくださいね。

[1] 単純性温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、放射能泉
[2] 白い砂浜や青々とした松原など、美しい海外の景色のこと
[3] 木や石、金属などで囲った灯りのこと。Lantern。

2. 温泉街をもっと楽しもう!絶景+αの豆知識

日本人は、およそ2人に1人が毎日浴槽に浸かるといわれています。世界でも風呂好きな国民として有名ですが、そんな日本人の入浴文化を古くから支えてきたのが、日本の温泉です。その歴史は、記録に残っているだけでも約1,300年に及びます。

中世までの温泉は、主に病気の治療や健康の回復を目的としていました。これは「湯治(とうじ)」と呼ばれ、医学的にも効果が認められています。

近世になると、湯治に加えて、現代のようにリラックスや観光を目的に訪れる人が増えていきました。そうして、だんだんと湯治場が発展してできたのが温泉街です。

温泉街では、美しい景観や温泉はもちろん、その土地ならではの食や文化を体験することができます。

例えば、温泉饅頭(おんせんまんじゅう)[4]や温泉卵(おんせんたまご)[5]などは、温泉を利用して作る温泉街ならではの定番グルメです。また、採れたての海の幸や山の幸が味わえるのも、豊かな自然に囲まれた温泉街ならではです。

温泉まんじゅう
温泉卵

土産物店に立ち寄れば、扇子(せんす)[6]や箸、草履(ぞうり)[7]など、日本の伝統工芸品を見たり買ったりすることもできます。化粧水や石鹸など、温泉成分を使ったスキンケアアイテムもあります。

このように、いろいろな楽しみ方ができる温泉街は、今や日本人にとっても週末や長期休暇の旅先としておなじみのスポットとなっています。

日本の温泉を訪れた際には、ぜひ皆さんもただ湯に浸かるだけでなく、温泉街を散策しながらいろいろな「日本」を体感してみてくださいね。

[4] 小麦粉などをこねた皮で甘いあんを包んだお菓子。
[5] 湯に一定時間浸けて加熱した卵。ゆで卵よりも少し軟らかい。
[6] 暑いときなどに仰いで風を起こす道具。
[7] 日本の伝統的な履物。

3. まとめ

いかがでしたか。

温泉街は、源泉を中心に温泉施設や宿泊施設、商店などが集まってできた場所です。日本でも観光名所として全国各地に点在しています。

今回ご紹介した絶景の温泉街は、以下の9つです。

【群馬】草津温泉(くさつおんせん)
【神奈川】箱根温泉(はこねおんせん)
【山形】銀山温泉(ぎんざんおんせん)
【岐阜】下呂温泉(げろおんせん)
【兵庫】有馬温泉(ありまおんせん)
【鳥取】皆生温泉(かいけおんせん)
【愛媛】道後温泉(どうごおんせん)
【大分】別府温泉(べっぷおんせん)
【熊本】黒川温泉(くろかわおんせん)

日本人の入浴文化の歴史は、記録に残っているだけでも約1,300年に及びます。

中世までは、主に病気の治療や健康の回復を目的としていました。近世になると、湯治に加えて、現代のようにリラックスや観光を目的に訪れる人が増えていきました。そうして、だんだんと湯治場が発展して温泉街ができました。

温泉街では、美しい景観や温泉はもちろん、その土地ならではの食や文化を体験することができます。いろいろな楽しみ方ができる温泉街は、今や日本人にとって、週末や長期休暇の定番の旅先となっています。

あなたもぜひ、日本の文化・伝統が盛りだくさんの温泉街へ足を運んでみてはいかがでしょうか?

参考)
一般社団法人草津温泉観光協会「草津温泉ポータルサイト 湯LOVE草津」,https://www.kusatsu-onsen.ne.jp/top.php(閲覧日:2022年6月30日)
箱根温泉旅館ホテル協同組合「箱根温泉公式ガイド 箱ピタ」,https://www.hakone-ryokan.or.jp/(閲覧日:2022年6月30日)
箱根町観光協会「箱根全山」,https://www.hakone.or.jp/(閲覧日:2022年6月30日)
銀山温泉公式サイト「銀山温泉」,http://www.ginzanonsen.jp/index.html(閲覧日:2022年6月30日)
公益社団法人山形県観光物産協会「銀山温泉」,『やまがたへの旅 山形県公式観光サイト』,https://yamagatakanko.com/attractions/detail_2832.html(閲覧日:2022年6月30日)
下呂温泉旅館協同組合「下呂温泉」,『下呂温泉旅館協同組合オフィシャルホームページ』,http://www.gero-spa.or.jp/(閲覧日:2022年6月30日)
下呂温泉合掌村「下呂温泉合掌村」,http://www.gero-gassho.jp/info/ (閲覧日:2022年6月30日)
一般社団法人下呂温泉観光協会「下呂温泉観光協会」,https://www.gero-spa.com/(閲覧日:2022年6月30日)
一般社団法人有馬温泉観光協会・一般社団法人有馬商店会「有馬温泉観光協会公式サイト 有馬温泉」,http://www.arima-onsen.com/(閲覧日:2022年7月1日)
道後温泉事務所「愛媛松山 道後温泉」,https://dogo.jp/(閲覧日:2022年7月1日)
公益社団法人ツーリズムおおいた「大分県観光情報サイト 日本一のおんせん県おおいた 味力も満載」,https://www.visit-oita.jp/(閲覧日:2022年7月1日)
別府八湯温泉道事務局「別府八湯温泉堂【公式】」,https://onsendo.beppu-navi.jp/ (閲覧日:2022年7月4日)
別府地獄組合「べっぷ地獄めぐり」,http://www.beppu-jigoku.com/index.html(閲覧日:2022年7月4日)
Jappan-guide.com 「Beppu」,https://www.japan-guide.com/e/e4700.html(閲覧日:2022年7月4日)
別府市 「温泉百科 温泉データ」,https://www.city.beppu.oita.jp/sangyou/onsen/detail4.html(閲覧日:2022年7月4日)
皆生温泉旅館組合「山陰・米子 皆生温泉」,https://www.kaike-onsen.com/(閲覧日:2022年7月7日)
黒川温泉観光旅館協同組合「黒川温泉」,https://www.kurokawaonsen.or.jp/(閲覧日:2022年7月7日)
TOKYO GAS「日本人がお風呂好きな理由」,『都市研コラム』,https://www.toshiken.com/column/2006/06/post-117.html(閲覧日:2022年7月7日)
環境省「令和2年度温泉利用状況」,https://www.env.go.jp/nature/onsen/pdf/2-4_p_1.pdf(閲覧日:2022年7月7日)