秋は、四季の中でも特に月が明るく、きれいに見える季節です。中でも、1年で最も美しい月が見られるのが、旧暦8月15日の「中秋節」。日本では、中秋節のことを「お月見(おつきみ)」「十五夜(じゅうごや)」と呼び、秋の風物詩として親しんでいます。

今回は、日本の中秋節の歴史や過ごし方、都内でもきれいな月が見えるおすすめのスポットをご紹介します。

1. 日本の【中秋節】って?由来やベトナムとの違い

まずは、日本の中秋節の由来や、ベトナムの中秋節との違いについてご紹介します。

日本の中秋節「お月見」の由来

日本の中秋節・お月見は、中国の中秋節の文化が、平安時代に貴族の間で広まったことが始まりだといわれています。平安時代の物語として、日本で歴史的に有名な「源氏物語」の中でも、「月の宴(えん)」というお酒や音楽を楽しむうたげがあったことが記されています。

その後、お月見の文化は庶民にも広まりましたが、庶民の間では「収穫物を月にお供えし、作物の実りに感謝して豊作を祈る」という、収穫祭に近い意味合いが強かったといわれています。

日本の中秋節「お月見」はいつ?

日本の中秋節であるお月見も、旧暦の8月15日に行われます。しかし、新暦を採用している日本では毎年日付が変わり、例年9月中旬~10月上旬になることが多いです。

日本とベトナムの「中秋節」の違い

ベトナムの中秋節は、日本と同じく中国の中秋節がルーツであり、旧暦8月15日に行われます。農業が忙しい時期のため、収穫後の一休みとして、家族で料理を囲んで宴会をするのが風習です。

また、ベトナムの中秋節は「子どもの日」という意味合いも強く、お菓子が配られたり、親におもちゃを買ってもらえたりと、子どもにとって特別なイベントです。灯籠を持って行列で歩いたり、月餅を食べたりといった風習も、中秋節ならではのものです。

一方日本では、お月見の定番は「ススキ」と「月見団子」です。ススキを飾り、月見団子をお供えして、月を眺めながらお団子を食べたり、お酒を飲んだりします。特に現代では、豊作を祈るというよりも、月を眺めて楽しむといった過ごし方がメインになってきています。

2. 中秋節にまつわるエピソード

次に、日本の中秋節にまつわるエピソードをご紹介します。

ウサギにまつわる伝説

日本では、「月ではウサギがお餅をついている」という言い伝えが有名です。そのため、お月見でもウサギをモチーフにした飾りや食べ物をよく目にします。

月の模様が「ウサギが餅つきをしているように見える」といわれている

日本でよく知られるウサギにまつわる伝説は、インドの神話の中のこんなエピソードが元になっています。

ある日、猿とキツネとウサギが、空腹で倒れている老人を見つけました。3匹は老人のために食べ物を探し、猿は木に登って柿を、キツネは川で魚を捕ってきました。しかしウサギはどんなに頑張っても何も用意することができず、とうとう火をたいて、「私を食べてください」と火の中に飛び込みました。

実は、倒れていた老人は帝釈天(たいしゃくてん)という神様でした。ウサギの優しさに心を打たれた帝釈天は、ウサギの姿を月の中に残すことにしたということです。

また、古代中国の神話では、「月ではウサギが杵を持って不老不死の薬をついている」というものがあります。この話が日本に伝わった際に、薬が餅に変わったのではないか、という説もあります。

「お月見」のいろいろな呼び方

日本の中秋節に当たる「お月見」には、さまざまな呼び名があります。混乱するかもしれませんが、日本らしい表現なので、ぜひ覚えてみてください。

中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)

中秋節で見られる美しい月のことを、「中秋の名月」と呼びます。

中秋とは、「秋の真ん中」である旧暦の8月15日のことです。旧暦では7~9月の3カ月間を秋としており、ちょうど真ん中に当たる8月15日を「中秋」と名付けました。

十五夜(じゅうごや)

「お月見」と同じように使われる言葉です。元々は新月の日から数えて15日目を十五夜と呼び、旧暦の毎月15日を表す言葉でした。

時代の流れとともに、中秋の名月が見える夜「十五夜」と呼ぶようになったといわれています。

芋名月(いもめいげつ)

江戸時代から庶民に広まったお月見文化は、「作物の実りに感謝する」という意味合いが強く、その時期に採れた農作物をお供えしていました。当時、お供え物として多く使われていたのが里芋であり、中秋の名月は「芋名月」とも呼ばれるようになりました。

現代のお月見でポピュラーとなっている月見団子は、里芋を模したものだという説もあります。

<コラム>世界の「中秋節」

中国発祥の文化である中秋節は、世界中でも広く祝われています。その国々で異なる中秋節の文化をご紹介します。

中国

中秋節は、伝統的な家族団らんの日とされています。地域によって風習が異なり、水に映った月を見る、月を追いかける、竹を編むなど、さまざまな文化があります。

韓国

中秋節は一年の中でも重要な祝日で、「秋夕(チュソク)」とも呼ばれます。伝統的な服装をし、餅を松の葉で蒸した松餅(ソンピョン)を作って贈り合うのが習わしです。

タイ

仏教国であるタイでは、中秋節に民族衣装を着てお寺に行き、観音様を拝みます。月餅ではなく、サトウキビや桃を食べるのが風習です。

カンボジア

お祭りの後、老人たちがもち米を蒸して平たくしたものを子どもたちに与える風習があります。これには「欠けることがない」「仲むつまじい」と言った意味があり、子どもたちはもち米がこれ以上かめなくなるまで、しっかりかんで食べるとされています。

3. 日本風の中秋節「お月見」の楽しみ方

それでは、実際に日本の中秋節「お月見」を体験してみましょう。

お月見で定番の食べ物

お月見のお供え物として代表的なのが、月見団子です。作り方や供え方は地域によって異なり、お供えする数も十五夜にちなんで15個としたり、1年の月の数に合わせて12個としたりと、風習もさまざまです。

白玉粉を買ってきて月見団子を手作りする人もいますが、お団子にこだわらず、お月見にちなんだ和菓子を購入する人も多くなっています。和菓子店では毎年お月見にちなんださまざまな和菓子が売られているので、食べ比べしてみても楽しいでしょう。

「ウサギ饅頭」のように、ウサギをモチーフにした和菓子も人気

お供え物の準備と飾り方

月見団子以外に、ススキも日本のお月見で定番のお供え物です。稲穂に見立てたススキは、豊作祈願や魔除けの意味を込めて飾られます。その他に、栗や柿といった秋の収穫物、水やお酒をお供え物とする風習もあります。

お供え物を用意したら、月が見える場所に月見台を設置して飾りましょう。月見台に使うのは、簡易的なテーブルやトレイでも問題ありません。お月見の後は、お供え物を体に取り入れることで、健康や幸せを得られるといわれています。

4. 東京都内のおすすめ月見スポット5選

高層ビルの多い東京都内では、月がきれいに見えないのでは?というイメージがあるかもしれません。そんな都内でもお月見が楽しめる、おすすめスポットをご紹介します。

【東京タワー】

お月見の日に、特別なライトアップが楽しめる東京タワー。展望台から月を眺めるだけではなく、外から東京タワーと月を1枚に収めて写真を撮るのもお勧めです。

【東京スカイツリー】

「日本で最も月に近い展望施設」といわれる東京スカイツリー。高さ350mと450mに2カ所の展望台があり、「日本夜景遺産」「日本百名月」にも選ばれるなど、まさにお月見にぴったりなスポット。

【渋谷スクランブルスクエア】

2019年に渋谷にオープンした、人気の展望スポット。屋内と屋外両方に展望空間があり、渋谷の上空229mから360度の景色を眺められる「SKY STAGE」では、広い屋上で開放感たっぷりのお月見を楽しむことができます。

【六本木ヒルズ】

展望台はもちろん、月を見ながら食事ができるレストランも充実している六本木ヒルズ。屋外展望台「スカイデッキ」では、専門家の解説を聞きながらお月見ができるイベントも開催されます。

【向島百花園】

江戸時代から続く伝統行事「月見の会」が、毎年3日間にわたって行われます。茶会や琴の演奏を楽しむこともでき、幻想的な庭園で、風情ある「日本のお月見」が体験できます。

5. まとめ

日本の中秋節はお月見と呼ばれており、収穫祭に近い意味合いで行われています。旧暦8月15日に行われますが、日本は新暦を採用しているため、毎年日付が変わり例年9月中旬~10月上旬になっています。

日本のお月見は、ベトナムと同じく中国の中秋節をルーツにしていますが、お供え物や風習に違いが見られます。月見団子とススキをお供えするのが、日本の特徴です。

日本では「月ではウサギがお餅をついている」という言い伝えがあり、お月見には、ウサギをモチーフにした飾りや食べ物が多く見られます。また、お月見の他にも「中秋の名月」「十五夜」「芋名月」といった呼び名が存在します。

日本風のお月見では、月見団子や和菓子、ススキなどを月見台にお供えします。お供えしたものを食べることで、健康や幸せを得られるともいわれています。

最後に、東京でもお月見が楽しめる5つのスポットをご紹介しました。

・東京タワー
・東京スカイツリー
・渋谷スクランブルスクエア
・六本木ヒルズ
・向島百花園

現代の日本では、手軽なものから伝統的なものまで、さまざまなスタイルでお月見が楽しまれています。あなたもぜひ、日本の中秋節「お月見」を体験してみてください。

参考)
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訪日ラボ「中秋節とは?日本の十五夜にあたり、中国では家族団らんのひと時を過ごす日」,https://honichi.com/news/2021/04/26/chinesemidautumnfestival/(閲覧日:2022年9月5日)
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TOKYO SKY TREE「基本理念」,https://www.tokyo-skytree.jp/about/outline/(閲覧日:2022年9月5日)
日本百名月「『日本百名月』認定登録地 認定登録第16号【種別:A類】「東京スカイツリー®から望む月」(東京都墨田区)」,http://japan100moons.com/regist/218(閲覧日:2022年9月5日)
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