「奨学金の試験に合格できるかな?」
「準備は何から始めたらよいのかな?」

日本留学のために奨学金の取得を検討している方には、色々な不安や悩みがあると思います。そのような悩みを解消するためには、奨学金の需給に成功した経験者の話を聞くのが一番です。失敗した経験も含めて、きっと役に立つアドバイスをくれるでしょう。

今回は私からお話をしたいと思います。私は奨学金を3回受給したことがありますし、日本語教師として働く中で、自分の教え子たちが奨学金試験を受けた経験談も大変参考になりました。

そこで、教師の立場で見たベトナム人学習者の特徴を踏まえた上で、自分自身の経験と元教え子から聞いた経験をまとめてみました。奨学金を獲得するためのコツと3つの留意点です。皆さん、ぜひ参考にしてください。

ホアン・ティ・トゥイ・ヴァン
ハノイ国家大学人文社会科学大学卒
名古屋大学・日本法教育研究センター(ベトナム)日本語講師 (2009年~2021年)
茨城大学、専修大学、東京外国語大学への留学経験あり。
2021年10月株式会社ライトワークス入社。主にベトナム人留学生や日本で働くベトナム人材向けの支援プロジェクトを推進している。

1. 奨学金を獲得するためのコツ

奨学金の申請は、書類の準備から始まります。特に推薦状が大切です。書類選考が通ったら、面接を受けます。面接では注意する点がいろいろあります。でもコツをつかめば安心して受けられますから、大丈夫です。
それでは、一つずつ見ていきましょう。

1-1. 書類を準備する段階

最初のステップは申請書類の準備です。最も簡単なステップですが、成績証明書、卒業証書などの関連した書類を準備する際には、細心の注意を払い、丁寧に作成する必要があります。

まず、自分が作成できる書類から準備を始めてください。日本での学習計画などです。できあがったら、英語か日本語に翻訳します。学校によっては英語版の成績表を発行しないので、この場合は自分で英語版を作成しましょう。

成績証明書や卒業証書については、公的認証を取得する手続きが必要です。

申請書類の準備は、一気に済ませてしまうのがコツです。少しずつやっているとダラダラ長引いてしまい、余計に手間がかかります。翻訳も、公的認証の取得も、それぞれまとめて行うことで、結果的に時間も手間も減らせます。

書類が揃ったら、提出用のすべての書類をスキャンしてから、PDFファイルのデータとして保管してください。後々他の奨学金に申請する際、再利用できるからです。

集めた書類は、学校や奨学財団側に要求される書類リストの順番通りに、並べましょう。書類が足りているかどうかを、自分も相手側も確認しやすくなるからです。

1-2. 推薦状

奨学金を申請する際に、最も重要な書類の一つは推薦状です。

ベトナム側の推薦状の場合は、自分が通学している学校の学長や学部長の先生に推薦状を書いてもらう必要があります。先生方に推薦状を書いてもらうためには、学習成績、社会貢献活動・ボランティア活動の実績、自分の優れたことをすべてメモしておいてください。先生方がそのメモの内容を元に推薦状を作成するからです。

日本の学校を通じて奨学金に応募する場合は、学校や担当の教授に推薦してもらいます。先生方に自分のことを覚えてもらうために、授業中に積極的に意見を述べたり、学校の社会貢献活動・ボランティア活動などに参加したりするようにしてください。

そうすることで、学校の教授に推薦状を書くことをお願いしやすくなります。奨学金を申請する機会は1回だけではなく、複数回あるかもしれないことも忘れないでください。

1-3. 面接での答え方

奨学金試験の最終選考のほとんどは面接試験となります。

普段、面接の前に、「質問の内容を用意して、しっかり練習しておきましょう」、「自信を持って、質問に答えてくださいね」などと言われているでしょう。しかし、いくらしっかり予習しておいても、実際に面接の試験で予想外の質問を聞かれることや、言いたいことを上手く伝えられないことなどもあります。

そこで、3回もの面接を乗り越えてきた筆者から皆さんへ、面接で面接官に好印象を与えるためのアドバイスをお伝えします。

その1 質問された内容や面接官の意図を正しく理解してから、答えましょう。

外国語で面接を受けることが多いため、質問が聞き取れない場合は、必ず「申し訳ございませんが、質問をもう一度お願いします!」と面接官に伝えてください。

うまく聞き取れないまま答えてしまうと、質問の意図とは違う回答をしてしまうかもしれません。

また、聞き返すことで、頭の中で質問への回答を整理する時間が少しできます。しかし、どんな質問でもこの方法を採用すると、悪い印象を与えるので、本当に聞き取れない時だけ、質問を繰り返してもらいましょう

その2 質問の内容を把握してから、最初に結論を述べましょう。

結論の後、その根拠を説明します。項目ごとに整理して、順番に説明すると良いです。「その理由は3つあります。1つ目は○○です。2つ目は○○です。」という感じです。

ベトナム人の学生は知っている情報を長々と説明する傾向がありますが、それでは「結局、何が言いたいのか」が面接官に伝わりません。

あと、「はい/いいえ」で答えられる質問に対してはまず、「はい/いいえ」で答えてから、その理由を簡潔に述べてください。

その3 各質問に対してなるべく簡潔に答えてください。

一人当たりの面接時間が決まっているので、一つの質問に時間をかけすぎると、次の質問に進まないこともあります。

持ち時間が終わると、最後の質問に行かなくても面接が強制的に終わる可能性があります。

そのため、各質問への答えが長すぎないように注意しましょう!

その4 カメラに目線を向けて、話しましょう。

コロナ禍の影響で遠隔で行われる面接も増えています。

遠隔での面接を受ける際は、カメラに目線を向けて、話しましょう。パソコンの画面や喋っている人の方に目線を向けると、相手の画面上では目が下に向いて話すように見えてしまうからです。

しかし、カメラだけを見ると、表情も固くなってしまいがちなので、適度に目線を外してみるのも必要です。面接官に自信を持って、明るい表情を見せるために、適度に目線を外しながら、カメラを中心に目線をおくようにしましょう!

2. 「してはいけないこと」に注意

最後に、奨学金に申請するにあたって、「してはいけないこと」は何でしょう。一緒にみていきましょう。

(1)推薦状を書いてもらう時の注意点
ベトナムでも日本でも絶対に避けてほしいのは、同じ学校の二人以上の教授に推薦状を依頼することです。

同時に1つ以上の奨学金に申請することができるため、同時に二人以上の教授に推薦状を書いてもらう人がいますが、それは結果的にすべての教授からの信頼も失いその教授たちとの関係も崩してしまいます。

奨学金を獲得するかどうかは別の問題にして、今後のことを考えるとこの行為は絶対に良い結果になりません。

(2) 「重複受給不可」に注意
二つ目に、重複受給不可という条件が付いている奨学金の場合は、学習の成績がいくら優秀であっても、他の奨学金に申請してはいけません。第―次奨学金に応募する前に、応募要件をしっかり読むようにしてください。

(3) アルバイトの可否に注意
三つ目に、アルバイトに関する条件が付いている奨学金もあります。例えば、アルバイトの時間を減らす、アルバイトをしない方が良い、といった条件です。このような条件が付いている理由は、奨学金を受給することで、生活費等の心配をせずに勉強に専念してほしいためです。

奨学金を受給する前に、奨学財団との誓約書に署名しなければなりません。誓約書に書いてある事項に違反した場合、奨学金が取り止められることもあるため、その誓約書の内容は必ず守りましょう!

3. まとめ

奨学金に申請するためのコツと留意点を改めてチェックしましょう!

・書類の準備の段階:丁寧に作成するのが重要なポイントです。
・推薦状:先生方に推薦状を書いてもらうように依頼しやすくなるためには、授業中で意見を述べたり、社会貢献活動・ボランティア活動に積極的に参加したりしましょう。
・面接での答え方:質問の内容を正しく理解してから答えるのが非常に大切です。

また、奨学金に応募する際には、「してはいけないこと」は

・同時に同学校の二人の教授に推薦状を書いてもらうこと
・重複受給不可の奨学金にもかかわらず複数の奨学金に申請すること
・奨学財団との約束を破ること
 
いかがでしょう。今回ご紹介した奨学金を獲得するためのコツを読んだことで、より自信がついて、日本への留学を前向きになっていただけましたでしょうか。

本稿にご共有した情報は、日本への留学を検討している皆さんには少しでも役に立てば幸いです。