日本の昔からの風習である「お盆」。お盆期間には、多くの会社や学校が休みになります。故郷に帰省する人も多く、お墓参りをしたり、普段は別々に暮らしている家族・親戚が集まって食事をしたりします。

日本人にとってお盆は、帰省やお墓参りなどで忙しくもあり、また普段は離れて暮らす家族や親戚に久しぶりに会えて、嬉しい機会でもあるのです。

今回はそんなお盆について、お盆とはどんなものなのか、由来過ごし方、外国人でも楽しめるお盆の行事などをご紹介します。

1. お盆とは?言葉の意味

お盆の正式名称は、盂蘭盆会(うらぼんえ)または盂蘭盆(うらぼん)です。これは、サンスクリット語で「逆さ吊り」を意味する「ウラバンナ」が起源であり、仏教の言葉です。

一方で、日本語でお盆はtray(トレー)という意味でもあります。精霊へのお供え物を乗せるお盆そのものが精霊の呼び名となり、盂蘭盆会と混同されて行事そのもの「お盆」と呼ぶようになった、という説もあります。

2. お盆の由来とは

盂蘭盆会の由来となった「盂蘭盆経(うらぼんきょう)」というお経に、こんなエピソードがあります。

お釈迦様の弟子である目連(もくれん)は、神通力によって、亡くなった母親が地獄で逆さ吊りになって苦しんでいることを知りました。

母をかわいそうに思った目連がお釈迦様に相談すると、「7月15日に僧侶を招き、たくさんのお供え物を用意して供養しなさい」と教えられました。目連が教えられた通りにすると、母親は極楽へ行くことができた…という話です。

日本には、古くから夏にご先祖様を供養する風習がありました。そこに盂蘭盆経が伝わってきたことで、旧暦の7月15日に先祖を供養するお盆の行事が生まれたといわれています。

3. 日本人も意外と知らない!お盆の種類

日本のお盆は地域や風習によって細かい違いがあり、日本人でも、自分の家の風習以外についてはほとんど知りません。お盆には例えば、以下のような種類・地域による違いがあります。

初盆(はつぼん)

初盆は、故人が亡くなってから四十九日の法要を終えた後、初めて迎えるお盆のことです。

亡くなってから初めて故人の霊が自宅に帰ってくる機会と考えられているため、通常のお盆よりも丁寧に行います。地域によって呼ばれ方が異なり、「はつぼん」や「ういぼん」、または「新盆」と書いて「しんぼん」や「あらぼん」と呼ぶ地域もあります。

旧盆(きゅうぼん)

旧盆は、8月に行われるお盆のことを指します。

日本では、明治時代に新暦が導入されましたが、新暦のお盆は7月半ばで、農業の繁忙期に重なっていました。そこで、旧暦とほぼ同じ時期の8月15日を中心にお盆を行うようになったということです。

現在、一般的な「お盆」は8月に行われる旧盆にあたります。

新盆(しんぼん)

新盆は、初盆と同じ意味でも使われますが、「新暦のお盆」という意味もあります。

新暦にのっとり、7月に行われるお盆のことを「新盆」といい、一部の地域で使われています。

4. お盆の期間はいつ?地域による違いも

お盆の期間は、地域によって以下のような違いがあります。

新盆の地域(7月13日~16日)

東京都市部、神奈川、静岡、石川県金沢市の旧市街地、熊本の一部

旧盆の地域(8月13日~16日)

ほぼ全国

旧暦7月13日~16日の地域

沖縄県、鹿児島県奄美地方
※現在も旧暦にのっとってお盆が行われており、毎年日付が変動します。

<コラム>海外の「お盆」に似た行事

日本のお盆期間には、海外でもお盆と似た行事が行われているところがあります。一部をご紹介しましょう。

中元節(ちゅうげんせつ)

中国、台湾、香港の行事。霊魂が最も多くさまようとされる旧暦7月15日に、お供えをして霊魂を慰めます。

Le Vu Lan(ブーラン祭)

ベトナムの行事。旧暦7月15日に、盂蘭盆経の言い伝えを由来としてお供え物や先祖の供養を行います。

秋夕(チュソク)

韓国の行事。旧暦8月15日とその前後1日ずつが祝日となり、先祖の墓参りや秋の収穫の感謝を行います。

「霊魂」や「先祖」、「収穫の感謝」などといった対象・目的の違いはありますが、同じ時期に似たようなことを行っているのは、なんだか面白いですね。

5. お盆期間の過ごし方

実際に、お盆期間にはどのような過ごし方をするのでしょうか。一般的な過ごし方をご紹介します。

1日

お盆が行われる月の1日を「釜蓋朔日(かまぶたついたち)」と呼びます。釜蓋朔日は、地獄の釜のふたが開く日だと言われています。

この日からお盆になると考え、お墓の掃除お墓参り、仏壇の掃除、盆提灯の用意などをします。

7日

この日を「棚幡(たなばた)」または「七夕(たなばた)」と呼びます。

台の上に敷物を敷いて、ナスやきゅうりで作った精霊馬(しょうりょううま)を用意し、ご先祖様を迎える精霊棚(しょうりょうだな)をセットします。

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13日

この日から、一般的に「お盆」といわれる期間に入ります。夕方に「迎え火」を焚き、ご先祖様をお迎えします。

火を焚くのは、ご先祖様が迷子にならないためといわれています。

14、15日

ご先祖様が精霊棚に滞在すると考えられているため、お供え物を欠かさないようにします。

16日

ご先祖様は午前中まで自宅にいるといわれているため、朝はお供えをします。

夕方になり、暗くなってきたら「送り火」を焚いて送り出し、片付けをします。

6. 外国人も楽しめる!お盆の行事

家族が集まり、先祖を供養する…というと、なんだか身内で静かに過ごすイメージを思い浮かべるかもしれません。

しかし、お盆に開催されるイベントの中には、外国人や観光客が楽しめるものもあります。日本らしい、美しい風景が見られるものも多いので、お盆休み期間に足を運んでみてはいかがでしょうか。

京都五山送り火(きょうとござんおくりび)

京都市内の5つの山で、お盆の精霊を送る送り火が灯されます。京都送り火で点火する護摩木に、名前などを書いて納めると厄除けになるといわれています。

灯籠流し(とうろうながし)


火を灯した灯籠を海や川に流す行事で、お盆の送り火の一環として行われています。

日本全国の様々な場所で行われており、福井の永平寺大燈籠ながし、京都の宮津燈籠流し、山梨の富士河口湖灯籠流しなどが有名です。

元々は先祖を送るための行事ですが、中には観光客も参加し、願い事やメッセージを灯籠に書いて流せるところもあります。

盆踊り

元々は先祖を供養するための行事でしたが、近年は純粋に踊りを楽しむことや地域活性化が目的になっているものも多く、気軽に参加することができます。

徳島の阿波踊り、岐阜の郡上踊り、秋田の西馬音内(にしもない)盆踊りは、日本三大盆踊りと言われています。

<コラム>盆踊りに参加しよう!

盆踊りは、「見る」「実際に踊る」、2つの楽しみ方があります。

地域によっては決められた人だけが踊る、「見る」メインの盆踊りもありますが、基本的には誰でも参加OK!周りの人の真似をして踊れば大丈夫です。

盆踊りで全国的によく使われる曲は、「東京音頭(とうきょうおんど)」「炭坑節(たんこうぶし)」「ソーラン節」など。盆踊りに行ってみたい!と思ったら、ぜひ一度聞いてみてください。

また、浴衣を着て盆踊りに参加すれば、さらに気分も盛り上がります。周りには屋台が出ていることも多いので、お祭り気分で楽しみましょう!

7. まとめ

お盆の正式名称は「盂蘭盆会」で、盂蘭盆経というお経の中のエピソードが由来となっています。

盂蘭盆経には、7月15日にお供え物をお盆に乗せることで死者の魂が供養されるというエピソードがありました。盂蘭盆経と、日本に昔からあった先祖供養の風習が合わさり、現在のお盆の行事になったといわれています。

お盆には、故人が亡くなってから初めて迎える「初盆」、8月に行う「旧盆」、7月に行う「新盆」があります。一般的にお盆というと8月(旧盆)を指しますが、地域によっては7月(新盆)をお盆とするところもあります。

お盆期間にはご先祖様を迎える準備をして、迎え火やお供え物を用意します。お盆の最終日の夕方になると、送り火を焚いてご先祖様を送り出します。

お盆には京都五山送り火灯籠流し盆踊りなど、外国人が参加できる行事もあります。特に盆踊りは誰でも参加でき、お祭りのような楽しいイベントです。

お盆は先祖を供養するための行事ですが、日本らしい先祖や家族を大事にする心美しい風景夏らしい行事を体感できる機会でもあります。ぜひ一度、「日本のお盆」を肌で感じてみてください。

参考)
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千趣会の花とギフトの専門ショップ イイハナ・ドットコム「お盆の由来」,https://www.e87.com/selection/obon/column_01.html(閲覧日:2022年7月14日)
霊園・墓石のヤシロ「お盆の始まり、盂蘭盆会(うらぼんえ)」,https://www.yasiro.co.jp/colum/detail/colum18.html(閲覧日:2022年7月14日)
お仏壇のはせがわ「【2022年度版】新盆(初盆)とは?いつ何を準備する?基本を解説」,https://www.hasegawa.jp/blogs/kuyou/obon-hatsubon(閲覧日:2022年7月19日)
株式会社 鎌倉新書「地域で違う!|新盆と旧盆の違い」,『いい仏壇』,https://www.e-butsudan.com/guide/1808/(閲覧日:2022年7月19日)
株式会社リクルート「【お盆とは】時期はいつ?何をする?地域による違いや過ごし方などわかりやすく解説」,『行ってみたい!が見つかるじゃらんニュース』,https://www.jalan.net/news/article/459976/(閲覧日:2022年7月19日)
tenki.jp「霊魂が下界をさまよう「鬼月」、中国のお盆「中元節」の深い意味を探る」,https://tenki.jp/suppl/marinahishinuma/2016/08/16/14391.html(閲覧日:2022年7月20日)
韓国旅行コネスト「韓国の秋夕(チュソク)」, https://www.konest.com/contents/korean_life_detail.html?id=435(閲覧日:2022年7月20日)
京都観光オフィシャルサイト 京都観光Navi「京都五山送り火「どんな行事?」」, https://ja.kyoto.travel/event/major/okuribi/(閲覧日:2022年7月19日)
RETRIP「大切なあの人と見たい。日本国内で観られる光の絶景「灯篭流し」12選」,https://rtrp.jp/articles/81404/(閲覧日:2022年7月20日)
10年先も思い出す体験を いこーよとりっぷ「2022関東近郊の灯籠流し7選 子供に伝えたい日本伝統の光の行事」,https://trip.iko-yo.net/articles/481(閲覧:2022年7月20日)
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