外国人労働者の在留資格 企業が知っておくべき基本事項を丁寧解説!

「在留資格のしばりって本当のところどの程度なんだろう?」

在留資格について調べ始めたばかりの方は、こんな風に思うかもしれません。

一言で言うと、在留資格は外国人労働者雇用の「キホンのキ」であり、彼らの働き方の根幹を握る最重要ファクターです。

採用時はさることながら、就労期間中にも常に在留資格を気にする必要があります。

この点において、在留資格に関する知識は人事担当者のみならず、管理職や日本人の同僚にも、在留資格の何たるかを知ってもらう必要があるでしょう。

外国人労働者の在留資格は数十種類あり、取得するための条件や在留期間はさまざまです。

さらに、在留資格によっては就労できないもの、または条件付きで就労できるものがあります。

企業の人事担当者が在留資格についてあまり理解していないと、自社の業務に対応できない外国人労働者を採用したり、在留資格の申請や変更手続きが難航し、採用後の人事がうまく稼働しない事態が起こり得ます。

それだけでなく、就労できない外国人を働かせたり、就労条件で定められた範囲外の仕事をさせた企業は「不法就労助長罪」に問われ、罰金や懲役の対象になります。

外国人労働者の在留資格は、「知らなかった」では済まされない問題なのです。

本稿では、在留資格の種類を一覧で分かりやすく解説します。

さらに、外国人労働者の雇用を検討している企業が知っておくべき在留資格のポイントや雇用する際の注意点を詳しく解説します。

外国人労働者を雇用する際の参考にしていただけると幸いです。

外国人雇用のガイドブック_まなびJAPAN

1. 外国人労働者の在留資格 まずは基礎知識を理解しよう

まず、外国人労働者の雇用を検討している企業が知っておくべき、在留資格の基礎知識を解説します。

1-1. 在留資格とは?

在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するために必要な資格のことで、出入国在留管理庁が管轄します。

在留資格によって、働ける仕事内容や日本での在留期間が異なります。在留資格で定められている範囲外の仕事をしたり、在留期間を超えて日本に滞在すると違法行為になります。

在留資格は全部で29種類(2021年11月現在)あり、一人が同時に2つの在留資格を持つことはできません。

1-2. ビザ(査証)と在留管理の違い

ビザ(査証)とは、外国人が日本に入国することを認める証書のことです。

犯罪歴があったり、保持しているパスポートが不適格とされたりした人にはビザは発行されず、入国は許可されません。ビザは日本大使館や日本領事館が発行します。

まとめとして、在留資格とビザの違いは以下のようになります。

・在留資格:日本に入国後の活動を合法的に認めるもの(出入国在留管理庁が管轄)
・ビザ:日本への入国を認めるもの(海外の日本大使館・日本領事館が発行)

1-3. 在留資格があれば雇用できる?

企業は、在留資格を持つ外国人であれば、誰でも雇用できるわけではありません。

出入国在留管理庁によると在留資格には以下、4つの分類があります[1]

・就労が認められる在留資格(活動制限あり)
・身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)
・就労の可否は指定される活動によるもの
・就労が認められない在留資格

「就労が認められる在留資格」を持つ外国人は働くことができますが、在留資格で定められている範囲の業務に限られます。

また、「就労が認められない在留資格」を持つ外国人は原則、働くことができません。

よって、外国人労働者の雇用を検討している企業は、以下の点を覚えておく必要があります。

(1) 企業は、外国人労働者を在留資格で定められた範囲内でしか雇用できない
(2) 在留資格によっては、原則、就労が認められていないものもある

次の章では、それぞれの在留資格の種類と特徴について詳しく解説していきます。

[1] 法務省「在留資格一覧表」,https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Events/bdb/49facb9d51d120db/session_second_1.pdf(閲覧日:2021年11月8日)

2. 【在留資格一覧】在留資格の種類を解説

この章では、29種類の在留資格を分類別に解説します。各在留資格の特徴や、活動の内容、在留期間などに注目していきましょう。

2-1. 就労が認められる在留資格

以下の在留資格を持つ外国人は、決められた範囲内でのみ就労することが可能です。

表1)「就労が認められる在留資格」

在留資格 該当例 在留期間
外交外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員およびその家族外交活動の期間
公用外国政府の大使館、領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等およびその家族5年、3年、1年、3カ月、30日または15日
教授大学教授など5年、3年、1年または3カ月
芸術作曲家、画家、著述家など5年、3年、1年または3カ月
宗教外国の宗教団体から派遣される宣教師など5年、3年、1年または3カ月
報道外国の報道機関の記者、カメラマン5年、3年、1年または3カ月
高度専門職1号ポイント制による高度人材5年
高度専門職2号ポイント制による高度人材無期限
経営・管理企業等の経営者・管理者5年、3年、1年、6月、4カ月、3カ月
法律・会計業務弁護士、公認会計士など5年、3年、1年、3カ月
医療医師、歯科医師、看護師5年、3年、1年、3カ月
研究政府関係機関や企業等の研究者5年、3年、1年、3カ月
教育中学校・高等学校等の語学教師など5年、3年、1年、3カ月
技術・人文知識・国際業務機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、企業の語学教師、マーケティング業務従事者など5年、3年、1年、3カ月
企業内転勤外国の事業所からの転勤者5年、3年、1年、3カ月
介護介護福祉士5年、3年、1年、3カ月
興行俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手など3年、1年、6月、3カ月、15日
技能外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者,貴金属等の加工職人など5年、3年、1年、3カ月
特定技能1号特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人1年、6カ月、4カ月
特定技能2号特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人3年、1年、6カ月
技能実習1号技能実習生法務大臣が個々に指定する期間
(1年を超えない範囲)
技能実習2号技能実習生法務大臣が個々に指定する期間
(2年を超えない範囲)
技能実習3号技能実習生法務大臣が個々に指定する期間
(2年を超えない範囲)

※2章のすべての在留資格の一覧は、以下を参考にライトワークスが作成
出入国在留管理庁「在留資格一覧」,令和3年8月,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html(閲覧日:2021年11月3日)

出入国在留管理庁によると、「就労が認められる在留資格」の中では、技能実習、技術・人文知識・国際業務、留学の在留資格を持つ外国人の数が多くなっています[2]

2-2. 身分・地位に基づく在留資格

以下、身分・地位に基づく在留資格には、就労活動の制限はありません。

企業は、この種の在留資格を持つ外国人には、どのような業種の仕事でも割り当てることができます。

表2)「身分・地位に基づく在留資格」

在留資格 該当例 在留期間
永住者法務大臣から永住の許可を受けた者無期限
日本人の配偶者等日本人の配偶者・子・特別養子5年、3年、1年、6カ月
永住者の配偶者等永住者・特別永住者の配偶者及び本邦で出生し引き続き在留している子5年、3年、1年、6カ月
定住者第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人等5年、3年、1年、6カ月または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)

2-3. 就労の可否は指定される活動によるもの

「就労の可否は指定される活動によるもの」の在留資格には、特定活動があります。

特定活動には、他の在留資格では網羅できない活動をカバーする目的があります。

例えば、新型コロナウイルスのパンデミックにより母国への帰国が困難な外国人には、条件に応じて特定活動の在留資格が付与され、在留期間の延長が可能になります。

表3)「就労の可否は指定される活動によるもの」

在留資格 該当例 在留期間
特定活動外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者など5年、3年、1年、6カ月、3カ月または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)

2-4. 就労が認められない在留資格

以下、就労が認められない在留資格を持つ外国人は原則として働くことはできません。

しかし、資格外活動の許可を受けた場合は、許可の範囲内で働くことができます。詳しくは3章で解説します。

表4)「就労が認められない在留資格」

在留資格 該当例 在留期間
文化活動日本文化の研究者など3年、1年、6カ月、3カ月
短期滞在観光客、会議参加者など90日、30日または15日以内の日を単位とする期間
留学大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、中学校及び小学校等の学生・生徒法務大臣が個々に指定する期間(4年3カ月を超えない範囲)
研修研修生1年、6カ月、3カ月
家族滞在在留外国人が扶養する配偶者・子法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲)

参考)ライトワークスのeラーニング教材「外国人材採用企業向けシリーズ 入門編」https://www.lightworks.co.jp/e-learning/93
[2] 出入国在留管理庁「令和2年6月末現在における在留外国人数について」,令和2年10月9日,https://www.moj.go.jp/isa/content/930006222.pdf(閲覧日:2021年11月3日)

3. 外国人の雇用を検討している企業が知っておくべき在留資格5つ

この章では、外国人労働者の雇用を検討している企業が知っておくべき5つの在留資格を解説します。

・高度専門職
・技術・人文知識・国際業務
・技能実習
・特定技能
・留学

それぞれを詳しく解説します。

3-1. 高度専門職

高度専門職とは、高度人材と呼ばれる優秀な外国人の受け入れを促進するための在留資格です。

2章の表1)で示したように、高度専門職の在留資格には、高度専門職1号と高度専門職2号があり、高度専門職1号はその活動内容によって以下のように分類されます。

・高度専門職1号イ:研究や研究の指導、または教育をする活動
・高度専門職1号ロ:自然科学、または文科学の知識や技術を要する活動
・高度専門職1号ハ:経営や管理に従事する活動

高度専門職1号の場合、入管法で最長の期間である5年の在留期間が一律に与えられるのが大きな特徴です。

高度専門職1号から高度専門職2号に移行するには、高度専門職1号で3年以上活動していることなどの条件があります。高度専門職2号の場合、在留期間は無期限となります。

「高度人材ポイント制度」とは?

高度専門職の在留資格を取得するには、入国管理局が定める「高度人材ポイント制度」において、70ポイント以上を獲得する必要があります。

高度人材ポイント制度は、「高度学術研究分野」「高度専門・技術分野」「高度経営・管理分野」に分かれています。

それぞれに「学歴」「職歴」「年収」などの項目があり、該当項目を合算して70ポイント以上の人材に高度専門職の在留資格が与えられます。

表)高度人材ポイントの内容(付与されるボーナスについては抜粋)

 

高度学術研究分野

高度専門・技術分野

高度経営・管理分野

学歴

博士号(専門職に係る学位を除く)取得者:30

博士号又は修士号取得者:20

修士号(専門職に係る博士号を含む)取得者:20

大学を卒業し又はこれと同等以上の教育を受けたもの(博士号又は修士号を取得者を除く):10

複数の分野において、博士号、修士号又は専門職学位を複数有している者:5

職歴
(実務経験)

 

10年~:20

10年~:25

7年~:15

7年~:15

7年~:20

5年~:10

5年~:10

5年~:15

3年~:5

3年~:5

3年~:10

年収

※表1を参照

3,000万~:50

2,500万~:40

2,000万~:30

1,500万~:20

1,000万~:10

年齢

29歳:15

29歳:15

 

34歳:10

34歳:10

39歳:5

39歳:5

※各項目の数値はポイントを表す

表1)年収配点表

~29歳~34歳~39歳40歳〜
1,000万40404040
900万35353535
800万30303030
700万252525
600万202020
500万1515
400万10

※各項目の数値はポイントを表す

※上記の表は、以下を参考にライトワークスが作成
法務省「ポイント計算表」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf(閲覧日:2021年11月4日)

上記の表に従って高度人材ポイントを計算してみましょう。

例)高度学術研究分野における人材

・学歴:博士号(専門職に係る学位を除く)を取得=30ポイント
・実務経験:7年=15ポイント
・年齢:30歳=10ポイント
・年収:700万円=25ポイント

合計:30+15+10+25=80ポイント

【高度専門職1号の在留資格を取得可能】

高度専門職の外国人労働者を雇用する際の注意点

企業が、すでに「技術・人文知識・国際業務」など、就労可能な在留資格を持つ人材を雇用する場合、勤務地が変わっても在留資格で認められている業務を行うのであれば、勤務地の変更を届出るのみで問題ありません。

しかし、高度専門職の場合は、勤務地が変わった場合、再度、入国管理局にて、高度専門職の申請を行う必要があります。

これには、転職後の企業でも、高度人材ポイント制度の基準をクリアしているかを確認する目的があります。

新しく雇用する外国人労働者の在留期間が残っていたとしても、再度、申請を行う必要があることを覚えておきましょう。

3-2. 技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務とは、日本国内の企業との契約に基づいて、自然科学や人文科学、外国の文化に関する専門知識や技術を用いた業務を行う外国人が取得できる在留資格です。

この在留資格を取得するためには、大学や短期大学、専門学校を卒業するか、一定年数の実務経験を積んでいなければなりません。

大学と短大に関しては、日本または海外のどちらでも問題ありませんが、専門学校の場合は、日本の専門学校に限定されます。

この在留資格は、技術・人文知識・国際業務の頭文字を取って「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれることもあります。

技術・人文知識・国際業務で行える仕事内容

技術・人文知識・国際業務の在留資格では、以下の仕事を行うことができます。

(1)「技術」に該当する仕事:機械系技術、ITエンジニア、電気系技術、機械工学などの開発など
(2)「人文知識」に該当する仕事:会計業務、経営企画、総務、商品企画、貿易事務など
(3)「国際業務」に該当する仕事:通訳、翻訳、語学講師、海外マーケティングなど

一方で、単純労働に該当する仕事には従事できません。例えば、建設現場での肉体労働、飲食店での接客や皿洗い、レストランでの配膳などを主とする仕事はできません。

技術・人文知識・国際業務の在留資格を申請するときの注意点

技術・人文知識・国際業務の在留資格を申請する場合、その多くが「留学」の在留資格からの変更という形になるでしょう。

その際、留学生が過去の在留期間中に違法行為を犯していると、在留資格の変更に支障をきたします。

年金の支払いが未納であったり、資格外活動の許可で定められている時間以上のアルバイトをしているなどの違反行為があると、在留資格の変更が受理されない可能性があります。

企業が留学生の過去の行動すべてを把握するのは簡単ではありません。

面談時に口頭で確認したり、留学生を適切に指導している学校と提携するなどの対策が有効です。

3-3. 技能実習

技能実習とは、外国人技能実習制度を利用して来日する技能実習生に与えられる在留資格です。

技能実習制度の目的は、日本の技術や技能、知識を開発途上地域などへ移転することです。

技能実習生を国籍別にみると、ベトナムが一番多く、次いで、中国、フィリピン、インドネシアが続きます(2020年現在)。

技能実習の在留資格

技能実習の在留資格は、技能実習1号から技能実習3号に分かれており、それぞれに移行することにより在留期間を延長できます。

表)技能実習の在留資格と在留期間

在留資格トータルの在留期間
技能実習1号1年
技能実習2号3年
技能実習3号5年

技能実習1号から技能実習2号、技能実習2号から技能実習3号に移行して、在留期間を延長するには、技能検定の合格が必要です。

技能実習生が来日しても、技能検定に合格できず1年程度で帰国してしまうと、企業にとって貴重な労働力を短期間で失うことになります。

企業は技能実習生が上位の在留資格に移行できるように、日本語教育や技能教育などのサポートをすることが望ましいと言えます。

雇用する際の注意点

出入国在留管理庁によると、2019年の技能実習生数は約51万人となり、過去最高を記録しました。

2020年は約49万人となり、新型コロナウイルスの影響により若干減少しました。

そして技能実習生数の増加に伴い、問題となっているのが技能実習生の失踪です。

2019年には8,796人が、2020年には5,885人が失踪しており、技能実習生の受け入れを検討する企業はこの問題についても対策を講じる必要があります[3]

技能実習生の失踪を防ぐために企業にできることは、信頼できる監理団体を利用することです。

どのような送出機関と提携しているのか、過去の実績はどのくらいあるのか、失踪者が出ないためにどのような取り組みをしているのか、などをヒアリングすることが重要です。

3-4. 特定技能

特定技能とは、2019年4月より導入された在留資格です。

少子高齢化問題を抱える日本において、一定の専門性や技能を有する外国人材を受け入れることで、人手不足を解消する目的があります。

特定技能には、特定技能1号と特定技能2号の在留資格があり、特徴は以下の通りです。

表)特定技能1号と特定技能2号の特徴

特定技能1号特定技能2号
在留期間1年、6カ月または4カ月ごとの更新、通算で上限5年まで3年、1年または6カ月ごとの更新
技能水準試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)試験等で確認
日本語能力水準生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除)試験等での確認は不要
家族の帯同基本的に認められない要件を満たせば可能(配偶者、子)
受入れ機関又は登録支援機関による支援対象対象外

※上記の表は、以下を参考にライトワークスが作成
JITCO「在留資格「特定技能」とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(閲覧日:2021年11月5日)

特定技能1号とは

特定技能1号を取得するには、一定の技能水準が求められます。

技術レベルとしては、技能実習の在留資格よりは高く、高度専門職や技術・人文知識・国際業務よりは低い水準になります。

特定技能1号では、以下の14の産業分野での受け入れが可能です。

・介護
・ビルクリーニング
・製造3分野(素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業)
・建設
・造船・舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業

特定技能2号を取得するには、特定技能1号を修了後、技能試験に合格することで取得できます。

また、特定技能2号評価試験に合格したうえで実務経験要件を満たせば、特定技能1号を経なくても、特定技能2号の在留資格を取得することができます。

しかし、特定技能2号評価試験は2021年に運用が始まったばかりなので、合格率がどのくらいなのかなど、実績はほとんどありません。

2021年11月現在、特定技能2号で受け入れが可能なのは、建設と造船・船用工業のみとなっています。

雇用する際の注意点

企業が特定技能1号の外国人労働者を雇用する際、以下の点に注意しましょう。

  • その1:外国人労働者の報酬額
    特定技能制度では、企業と外国人労働者が特定技能雇用契約を締結します。
    特定技能雇用契約には、「外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること。」と定められています[4]
    最低賃金をクリアしてれば良いというわけではないのです。
    特定技能1号の外国人労働者を雇用する際、適正な労働条件になっているか、今一度確認する必要があります。
  • その2:1号特定技能外国人支援計画の提供
    企業が、特定技能1号の外国人労働者を雇用する場合、「1号特定技能外国人支援計画」という生活支援を提供する義務があります[5]
    支援内容は以下の通りです。

    ・事前ガイダンスの提供
    ・出入国する際の送迎
    ・適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
    ・生活オリエンテーションの実施
    ・日本語学習の機会の提供
    ・相談又は苦情への対応
    ・日本人との交流促進に係る支援
    ・外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
    ・定期的な面談の実施、行政機関への通報

上記、項目内の「事前ガイダンスの提供」「生活オリエンテーションの実施」「相談又は苦情への対応」「定期的な面談の実施」などは、外国人が理解できる言語で提供しなければなりません。

外国人労働者が日本語を十分に理解できない場合、日本語以外の言語で支援を行える人材の確保が必要になります。

しかし、企業によっては、自社ですべての支援をするのは難しいというケースもあるでしょう。

その場合は、「登録支援機関」という機関に、支援の一部またはすべてを委託できます。

受け入れ企業がすべての支援を提供する、または委託機関を利用するか、いずれの方法を選択するにしても、企業には外国人労働者が仕事や私生活をスムーズに行えるようにサポートする必要があるということを覚えておきましょう。

3-5. 留学

留学とは、その名の通り日本に留学している学生に与えられる在留資格です。

来日の主な目的は勉学ですから、留学の在留資格では原則として働くことはできません。

しかし、資格外活動の許可を取得している留学生はアルバイトができます。資格外活動の許可は、在留カードの裏面またはパスポートに貼付される証印などで確認できます。

留学生をアルバイトとして雇用する場合の注意点

企業は留学生を資格外活動の許可の範囲内でのみ、働かせることができます。まず、勤務時間の制限に注意が必要です。

留学生は原則週に28時間までしか働けません[6]。この法律を犯すと、留学生は不法就労活動となり、働かせた企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。

また、パチンコ店、キャバレー、ゲームセンター、麻雀店など風俗営業を運営する企業は留学生を雇用できません。

留学生を正社員として雇用する場合の注意点

留学生を正社員として雇用するには、「技術・人文知識・国際業務」など、就労可能な在留資格に変更する必要があります。

しかし、在留資格によって4年制大学の卒業が必須になっているものもあり、短大や専門学校の学歴では、在留資格を変更できない場合があります。

留学生の雇用を検討する場合、採用後に想定している業務を遂行できる在留資格を取得できるか、という観点で留学生の学歴を確認する必要があります。

コンビニ業界の苦悩―スキルと経験がある人材を正社員として雇用できない

資格外活動の許可を取得している留学生には、原則、週に28時間までのアルバイトが認められています。

私たちは日常生活の中で、学費や生活費を補うために、コンビニエンスストアでアルバイトとして働く留学生を目にすることも多いと思います。

レジ打ち、接客、品出しなど複雑な業務を日本人と同程度こなす外国人労働者も多く、企業にとっては人材不足が懸念されるサービス業において貴重な労働力となっています。

留学生が専門学校や大学を卒業した後、自社で正社員として働いてほしいと願うコンビニ企業も少なくありません。

しかし、結論から言うと現時点で留学生をコンビニ業の正社員として雇うことは極めて難しいと言えます。理由は「在留資格のしばり」があるためです。

留学生を正社員として雇用するには、技術・人文知識・国際業務や高度専門職など、就労が認められている在留資格に変更する必要があります。

しかし、コンビニ業務は単純作業に分類されるため、これらの在留資格は取得できません。

では、単純作業でも就労が認められる特定技能はどうでしょうか。特定技能では14の産業分野での受け入れが可能ですが、残念ながらコンビニ業は含まれていません。

どれだけ優秀な外国人労働者であっても在留資格がなければ就労することができません。

コンビニ企業は、複雑な業務をこなすだけのスキルと経験を持つアルバイトの留学生をそのまま正社員として雇用したい一方、それを許さない在留資格の壁に直面しているのです。

[3] 出入国在留管理庁「出入国在留管理局資料」,https://jsite.mhlw.go.jp/fukuoka-roudoukyoku/content/contents/000678897.pdf(閲覧日:2021年11月15日)
[4] e-GOV法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成三十一年法務省令第五号),https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=431M60000010005(閲覧日:2021年11月5日)
[5] 法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領-1号特定技能外国人支援計画の基準について」,平成31年3月,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf(閲覧日:2021年11月8日)
[6] 在籍する教育機関が学則で定める長期休暇中は一日8時間、週40時間まで働くことが可能

4. 【在留資格のQ&A】在留資格の疑問を一挙解決

この章では、在留資格のQ&Aをご紹介します。外国人労働者を雇用する際の参考にしてください。

Q1 在留資格の申請や変更はどこで行えますか。

A 地方出入国在留管理官署及びインフォメーションセンターで行えます。 申請は原則として、外国人本人が窓口に書類を持参する方法とオンラインで受け付けています。 オンラインで申請を行う場合、所属機関の職員や弁護士・行政書士などが、事前に地方出入国在留管理官署で利用申出を行う必要があります。

・地方出入国在留管理官署連絡先
出入国在留管理庁「地方出入国在留管理官署」,https://www.moj.go.jp/isa/about/region/index.html(閲覧日:2021年11月8日)

・外国人在留総合インフォメーションセンター連絡先
出入国在留管理庁「外国人在留総合インフォメーションセンター等」,https://www.moj.go.jp/isa/consultation/center/index.html(閲覧日:2021年11月8日)

・在留申請のオンライン受付
出入国在留管理庁「在留申請のオンライン手続」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/onlineshinsei.html(閲覧日:2021年11月16日)

Q2 在留資格の確認方法を教えてください。

A在留資格は在留カードによって確認できます。在留カードとは、外国人が日本に適法に滞在できる在留資格を持つことを証明する証明書のことです。

このカードには、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労の可否などが記載されています。
16歳以上の外国人の場合は顔写真が表示されます。在留資格や住居地に変更があった場合は、住居地の市区町村の担当窓口に届出る必要があります。


引用元)出入国在留管理庁「在留カードとは?」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/whatzairyu.html(閲覧日:2021年11月8日)

Q3 日本国内の別の会社で働いていた外国人労働者を雇用する場合、在留資格の手続きを新たに行う必要がありますか。

A 以前の職場での業務と採用後の業務内容が同じ場合、在留資格に関する手続きは不要です。

ただし、同じ業務内容であっても、転職後の職場では在留資格の取得が認められない場合もあるため確認作業が必要です。

外国人労働者が持っている在留資格が、入社後の業務に対応しているかどうかわからない場合、就労資格証明書の取得がお勧めです。

この証明書は、採用後に行う予定の業務が外国人労働者が持っている在留資格に対応しているか否かを確認した後に交付されるものです。

「コストをかけて採用したけど、業務内容が在留資格に対応していなかった…」というミスを防げます。

転職によって業務内容が変わり、以前の在留資格では認められていない業務を行う場合は「在留資格変更許可申請」によって、在留資格の変更が必要です。

・就労資格証明書の交付について
出入国在留管理庁「就労資格証明書交付申請」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-9.html(閲覧日:2021年11月8日)

・在留資格変更許可申請について
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html(閲覧日:2021年11月16日)

Q4 外国人労働者を雇用した場合、在留資格の申請以外に行うべきことがありますか。

A 企業が外国人労働者を雇用する場合、ハローワーク(公共職業安定所)にて「外国人雇用状況の届出」を行う必要があります。
この届出を怠ると30万円以下の罰金が科されます。
この届出は、留学生をアルバイトとして雇用する際、または外国人労働者が離職する際も必要となるので注意が必要です。

・外国人雇用状況の届出について
厚生労働省「「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!」(閲覧日:2021年11月8日)

参考)ライトワークスのeラーニング教材「外国人材採用企業向けシリーズ 基礎編」https://www.lightworks.co.jp/e-learning/9366

5. まとめ

本稿では、外国人労働者の在留資格について詳しく解説しました。

在留資格とは、外国人が日本に滞在し、活動するために必要な資格のことで、出入国在留管理庁が管轄します。

一方、ビザ(査証)とは、外国人が日本に入国することを認める証書のことです。

在留資格を持つ外国人であれば、誰でも雇用できるわけではありません。企業の担当者は以下の点を把握しておく必要があります。

・企業は、外国人労働者を在留資格で定められた範囲内でしか雇用できない
・在留資格によっては、原則、就労が認められていないものもある

在留資格は以下、4つの分類があります。

・就労が認められる在留資格(活動制限あり)
高度専門職、技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習などが該当します。この在留資格を持つ外国人材は、決められた範囲内でのみ就労することが可能です。

・身分・地位に基づく在留資格(活動制限なし)
永住者、日本人の配偶者等、定住者が該当します。この在留資格を持つ外国人は、どのような業種の仕事でも行うことができます。

・就労の可否はしている活動によるもの
特定活動という在留資格が含まれます。特定活動には、他の在留資格では網羅できない活動をカバーする目的があります。

・就労が認められない在留資格
留学、研修などが該当します。これらの在留資格は原則、就労が認められていません。

この中で、外国人労働者を雇用したい企業が知っておくべき在留資格は4つです。

(1)高度専門職
高度専門職とは、高度人材と呼ばれる優秀な外国人の受け入れを促進するための在留資格であり、高度専門職1号と高度専門職2号があります。

高度専門職1号には、入管法の最長の期間である5年の在留期間が一律に与えられます。

高度専門職の在留資格を取得するには、入国管理局が定める「高度人材ポイント制」において、70ポイント以上が必要です。

雇用する際の注意点
すでに高度専門職を持つ外国人労働者を雇用する場合、入国管理局にて、再度、高度専門職の申請を行う必要があります。

(2)技術・人文知識・国際業務

(3)技能実習
技能実習とは、外国人技能実習制度を利用して来日する技能実習生に与えられる在留資格です。

技能実習の在留資格は、技能実習1号から技能実習3号に分かれており、技能検定に合格することで在留期間を延長できます。

雇用する際の注意点
技能実習生の増加に伴い、技能実習生の失踪数が増加しています。

技能実習生の失踪を未然に防ぐためには、信頼できる監理団体を利用することが重要です。

(4)特定技能
特定技能制度には、一定の専門性や技能を有する外国人材を受け入れることで、人手不足を解消する目的があります。

特定技能1号と特定技能2号の在留資格があり、特定技能1号では、介護、建設、宿泊、農業など14の産業分野で受け入れが可能です。

雇用する際の注意点
特定技能制度では、企業と外国人労働者が特定技能雇用契約を締結します。

この雇用契約では、特定技能1号の外国人労働者の報酬額が日本人と同等以上であることが定められています。

また企業が、特定技能1号の外国人労働者を雇用する場合、「1号特定技能外国人支援計画」という生活支援を提供する義務があります。

これには、事前ガイダンスの提供や日本語学習の機会、相談又は苦情への対応などが含まれます。

(5)留学
留学の在留資格は原則として働くことはできません。しかし、資格外活動の許可を取得している留学生はアルバイトができます。

雇用する際の注意点
留学生は資格外活動の許可の範囲内、つまり週に28時間までしか働けません。

それ以上の時間働くと、留学生は不法就労活動となり、働かせた企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。

留学生を正社員として雇用する場合、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格に変更する必要があります。

しかし、在留資格によっては4年制大学の卒業が必須の場合がありますから、留学生の学歴をしっかりと確認しましょう。

外国人労働者の在留資格は種類が多く、申請や変更をするには複雑な手続きが必要な場合があります。

とはいえ、外国人労働者を雇用して人材不足を解消し、企業の生産性を高めるには、在留資格について正しい知識が欠かせません。

今回の情報を参考にしていただき、外国人労働者の在留資格の手続きがスムーズに進むことを願っています。

外国人雇用のガイドブック_まなびJAPAN

参考)
法務省「在留資格一覧表」,https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Events/bdb/49facb9d51d120db/session_second_1.pdf(閲覧日:2021年11月8日)
出入国在留管理庁「在留資格一覧」,令和3年8月,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/qaq5.html(閲覧日:2021年11月3日)
出入国在留管理庁「令和2年6月末現在における在留外国人数について」,令和2年10月9日,https://www.moj.go.jp/isa/content/930006222.pdf(閲覧日:2021年11月3日)
法務省「ポイント計算表」,https://www.moj.go.jp/isa/content/930001657.pdf(閲覧日:2021年11月4日)
JITCO「在留資格「特定技能」とは」,https://www.jitco.or.jp/ja/skill/(閲覧日:2021年11月5日)
e-GOV法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令(平成三十一年法務省令第五号),https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=431M60000010005(閲覧日:2021年11月5日)
法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領-1号特定技能外国人支援計画の基準について」,平成31年3月,https://www.moj.go.jp/isa/content/930004553.pdf(閲覧日:2021年11月8日)
出入国在留管理庁「地方出入国在留管理官署」,https://www.moj.go.jp/isa/about/region/index.html(閲覧日:2021年11月8日)
出入国在留管理庁「外国人在留総合インフォメーションセンター等」,https://www.moj.go.jp/isa/consultation/center/index.html(閲覧日:2021年11月8日)
出入国在留管理庁「在留カードとは?」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/whatzairyu.html(閲覧日:2021年11月8日)
出入国在留管理庁「就労資格証明書交付申請」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-9.html(閲覧日:2021年11月8日)
厚生労働省「「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!」,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html(閲覧日:2021年11月8日)
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-2.html(閲覧日:2021年11月16日)
出入国在留管理庁「在留申請のオンライン手続」,https://www.moj.go.jp/isa/applications/guide/onlineshinsei.html(閲覧日:2021年11月16日)

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